価格相応のシンプルな宿泊体験
それは、長い旅の果てに辿り着いた、少しばかり風化した建物だった。歴史の重みというよりも、むしろ年月に疲れたような佇まいで、エントランスに足を踏み入れた瞬間、かつての栄華は遥か彼方のものだと感じた。
部屋に入ると、むっとするような熱気が立ち込めていた。窓を開け放してもすぐに変わるわけもなく、エアコンのスイッチを入れながら、ベッドへ腰を下ろした。しかし、無造作に置かれたシーツに触れると、指先にかすかに砂の感触が残り、思わず眉をひそめた。
シャワーを浴びてさっぱりしようと思ったが、流れ出たお湯はバスタブから溢れ出し、床を水浸しにした。床の冷たさを感じながら、足を引きずって部屋へ戻ると、隣の部屋のドアの開閉音がまるで自分の耳元で鳴り響くように聞こえてくる。壁が、ここではただの仕切りに過ぎないことを悟った。
翌朝、食堂で出された朝食を口に含むと、特に印象に残ることもない、ただ普通の味が広がり、お金を払った価値があるのかどうか、一瞬考えてしまった。スタッフたちはすれ違っても挨拶ひとつなく、まるでこの場所が無機質な空間であることを教えているかのようだった。
とはいえ、この価格帯のホテルに過度な期待は禁物だ。ここは、豪華さやサービスの細やかさを求める場所ではなく、ただ安価で休息を取れる場所として存在しているのだろう。必要最低限のベッドとシャワー、そしてトイレ。これだけで十分だと思えるなら、このホテルは相応の価値を提供してくれる。