イタリア、ヴェネツィアのサン・マルコ広場、アドリア海の居間

イタリア、ヴェネツィアの潟の朝霧はまだ晴れていないが、サン・マルコ広場の石畳には、千年も途絶えることのない足音が響いている。この梯形に広がる1万平方メートルの空間は、9世紀に基礎が築かれて以来、アドリア海の文明の磁極となる運命にあった。 ビザンチン様式のドームとゴシック様式の尖塔が朝日の中で競い合い、高さ98メートルの赤いレンガの鐘楼が松明のように空に突き刺さり、塔の上の青銅の時計の針は、今でも迷子の船に帰航の方向を測っている。 広場東側のサン・マルコ寺院は、5つの玉ねぎ型のドームで1200年前の金箔モザイクを支えている。太陽の光がバラ窓を透過すると、イエスの弟子聖マルコの棺は琥珀色の光輪に包まれる。福音書を執筆したこの使徒は、西暦828年にヴェネツィアの商人によってアレクサンドリアから密かに運ばれ、以来、水の都の精神的なトーテムとなった。 教会の玄関の4頭の青銅の馬は、第4回十字軍の東征でコンスタンティノープルの廃墟を踏破し、今でも固まった疾走の姿勢で、広場で終わることのないドラマを目の当たりにしている。 正午の鳩の群れは、広場の中で最も生き生きとした彫刻である。ヴェネツィアの人々に5世紀にわたって愛されてきたこれらの生き物は、突然ドゥカーレ宮殿のルネサンス様式のアーケードを掠め、ナポレオンが「ヨーロッパで最も美しい居間」と称した空間で銀色の嵐を巻き起こす。16世紀の文献によると、共和国はかつて鳩を傷つけることを禁じる法律を制定した。なぜなら、鳩は聖マルコの使者だったからだ。 現在、鳩が飛び交う中で、石畳の隙間に埋め込まれた青銅のイルカを垣間見ることができる。それは1902年の鐘楼倒壊時に残された亀裂で、修復後の建物はこの傷跡を意図的に残し、まるで華服に縫い付けられた歴史のパッチのようである。 夕暮れがドゥカーレ図書館のバロック様式のファサードを染めると、カフェ・フロリアンのクリスタルのシャンデリアが次々と灯る。1720年に開店したこの老舗の窓枠には、ディケンズの鉛筆の落書きが刻まれており、ヘミングウェイのウイスキーグラスが大理石のテーブルに琥珀色に染み込んでいる。 燕尾服を着たウェイターが銀の盆を持って鋳鉄製のテーブルと椅子の間を歩き回り、グラスがぶつかり合う軽快な音とゴンドラの櫂の音が響き合う。広場南西の角にあるカフェ・クアドリには、ゲーテが1786年に残した請求書が今でも保存されており、黄ばんだ紙には、コーヒーとため息の値段が同じように高額で記されている。 真夜中の潮が広場を覆い、月光がサン・マルコ寺院のモザイク壁画に銀の縁取りを施す。13世紀の排水システムが地下でサラサラと音を立てている。これは水の都と海が結んだ古の契約である。十字軍の東征の宣誓式から現代の映画祭のレッドカーペットの星明かりまで、広場は常に流れる歴史絵巻である。 最後のガス灯が消え、鳩が鐘楼の軒下で眠りにつくと、ヴェネツィアの鼓動は、サン・マルコ広場の石畳の模様の一つ一つに静かに響き渡る。