当惹雍錯、アリ大北線湖沼の最高峰

アリ大北線は、獅泉河から出発し、東に向かってアリ地区とナクチュ地区の奥地を横断するドライブコースです。多くのドライバーは幹線道路を離れ、大小さまざまな湖沼の間を縫うように走り、「次から次へと湖を訪れる」旅を満喫します。これらの高原湖沼は多くが塩湖で、大小さまざまな形をしています。チベットで3番目に大きい湖である扎日南木錯、面積が拡大し続けている色林錯、そして塔若錯、扎布耶錯、仁青休布錯といった穴場の湖など、有名な湖もいくつかあります。しかし、数千キロの行程の中で1つの湖しか選べないなら、間違いなく当惹雍錯でしょう。 当惹雍錯の面積は800平方キロメートルを超え、チベットの多くの湖沼の中で4番目に位置します。最大水深230メートルはナムツォの約2倍で、細長い湖面は金剛杵のような形をしています。南北方向に断裂した湖盆は巨大な高原構造湖を形成し、北20キロメートルにある当瓊錯もこの構造湖の一部と見なすことができます。標高4000メートルを超えるチベット北部高原で、当惹雍錯は山々に囲まれ、特に南側の達果雪山はひときわ高くそびえ、古代シャンシュン王国とボン教の聖なる山でもあります。 山々に囲まれた湿潤な小気候のおかげで、当惹雍錯湖畔では農耕と牧畜の2つの文化が同時に発展することができました。また、容易に守り難く攻めにくい地形は、この地をチベット北部の「選ばれし地」にしました。仏教がチベットに伝わる以前、ボン教はこの湖を聖なる湖と定め、シャンシュン王国は「東都」の王宮を湖の東側に建てました。シャンシュン王国が吐蕃王朝に滅ぼされた後、この地域の人々の活動は耕作と放牧に限られるようになりましたが、瓊宗のような遺跡や、ボン教の聖なる山と聖なる湖の伝説が残されました。 自然の美しさと歴史文化の魅力は、旅行者を当惹雍錯に惹きつける2つの大きな魅力です。そして、湖畔の村や寺院は、他のチベット北部の湖沼との大きな違いです。テレビで紹介されたこともある文布南村は、インターネットで人気の観光スポットになりつつありますが、大海原のような聖なる湖に面しながらも、依然として日の出とともに働き、日の入りとともに休む質素な生活を送っています。それは、現代都市から遠く離れた場所にあること、そして村人たちが古代ボン教の信仰を守り続けていることによるものです。村内の文布寺は、彼らが堅実に生活していくための精神的な支えとなっています。 文布南村以外にも、当惹雍錯には訪れる価値のあるボン教寺院がいくつかあります。吉松村の玉本寺は少なくとも1300年の歴史があり、シャンシュン王国の最後の王の生地でもあります。山に寄り添うように建てられた建物と洞窟の中の寺院は神秘的です。曲措寺は建国よりも100年早く建立され、寺内に保存されている多くのボン教の経典は、チベット仏教におけるその地位を確固たるものにしています。達果雪山の麓にある色西寺は規模は小さいですが、さまざまな宗教儀式はより純粋です。当瓊錯のほとりの文布北村にも寺院がありますが、ボン教からカギュ派に改宗しています。 雪山と湖の組み合わせはチベットでは珍しくありません。例えば、アリ・プランの「聖なる山と聖なる湖」であるカイラス山とマナサロワール湖、そして山南のプモユムツォとクンラガンリなどです。しかし、当惹雍錯は辺鄙な場所にあるため、知る人ぞ知る場所となっています。文布南村に滞在し、窓の外に雪山が映る湖面を眺めながら、ゆったりとバター茶を飲む。これが、ドライバーにとって当惹雍錯の最大の魅力かもしれません。