【岩瀬浜】（富山県富山市　旧国名：越中）

＜北前船の寄港地として殷賑を極めた港町　その遺産を生かした“デザインの文化圏”が注目を集めます＞ 前田家10万石の城下町として繁栄した富山市。本藩である加賀藩（かが　現在の石川県南部）の本拠地、金沢とともに北陸地方有数の規模を誇る都市として地域経済を牽引してきました。藩内では薬や和紙の生産を奨励し、経済の好循環を生み出してきましたが、そのなかで大きな役割を果たしたのが北前船の寄港地となった岩瀬です。富山城からおよそ9㎞北方に位置するこの外港は、神通川（じんづうがわ）の河口に港湾が設けられ、港の周囲には廻船問屋や海産物を取り扱う商家が多く軒を連ねました。その中には“岩瀬五大家”と称された豪商も隆盛し、わけても馬場家や森家（写真２、３枚目　2024年8月現在休業中）は、往時の繁栄を存分に物語る施設です。邸内の柱や梁には、数抱えはあろうかという巨大な木材が用いられ、尋常の日本家屋では成し得ない豪壮な規模の空間を象っています。これらを現実のものとした、北前船と西廻り航路による“富のからくり”についても、邸内の展示や遺物から詳しく知ることができ、岩瀬の歴史と個性のあらましを知るのに最適なスポットと言えます。 このように、江戸時代に栄華を極めた岩瀬も、近代に入り動力が転変すると衰退を免れ得なくなります。それでも、幸いにして戦災を逃れたために旧家は残存。大きく変動する社会にあって、昔ながらの街並みを残すノスタルジックな街区は当時の気分を濃厚に継承しました。一時は活気が失われ退潮著しかった岩瀬ですが、現在では風格ある旧家を、富山に培われた高度なデザインセンスでリノベーションすることで、観光地としての魅力を創出、発信しています。その代表格なのが“沙石”（写真５～７枚目）。こちらは、明治時代から岩瀬の地に続く“桝田酒造店”の手掛けるセルフ・スタンディング日本酒バーで、“満寿泉”に代表される同店の日本酒を心置きなく味わうことができるというもの。そのシステムは、時間を区切った飲み放題である“定時制”と、木の枡を用いて時間無制限に都度会計する“定量性”の2つ。いずれも大変魅力的ではありますが、自分が訪れた際には時間がたっぷりと残っていたために定量性のシステムに。冷蔵ケースには実に100種類以上もの銘柄が並び、一つの酒蔵で醸したお酒を、ここまでの規模で見る機会はなかなか無いことです。そのなかには4年前に製造したうえで熟成保存された実験的な希少品も含まれるなど、酒蔵の心臓部を垣間見るように貴重な体験ができるのです。店舗はかつての廻船問屋の倉庫をリノベーションしており、岩瀬や富山ゆかりのアーティストによるオブジェや写真も飾られています。 実は、桝田酒造店の現当主の方は岩瀬に若手の職人やアーティスト、料理人を積極的に誘致し、地域に根差した一つの文化圏の形成を促進。地域振興の仕掛け人として大いに注目を集めているのです。こうした取り組みによってできあがったもう一つのスポットが“Kobo Brew Pub”（写真１、８枚目）。ビールの本場、チェコから来日した職人が馬場家の敷地内にある倉庫のなかで醸すクラフトビールで、チェコ由来の、スッキリとした飲み口である“プレミアントピルスナー”が看板メニュー。黄金色と見紛うばかりの鮮やかな色合いが、和風木造建築ならではの深い陰影によっていっそう際立ち、興趣をそそります。さらに多彩な醸造法と地産の副素材を掛け合わせたビールも揃い、セットで飲み比べることも可能。特にグッと重みのある“ダークラガー”は、マスタードを纏ったソーセージとの相性が抜群で、心地よい余薫が染みわたります。パブの中に強い存在感を示す一枚板のテーブルは、20人から30人分の座席をカバーするほどの大きさで、その大胆な空間設計は旧馬場家の栄華を偲ばせるのに十分。先人たちの記憶と共に地域に残った遺産を、現代的なセンスで蘇らせ、再び賑わいを取り戻した岩瀬の今日は、日本における地域振興のモデルコースとして、そのデザイン性と共に注目される必然的な理由を持っています。 ひとり旅おすすめ度：★★★（人はそれなりにいるが、広い場所なので気にならない） 探訪日：9月第1週土曜日16時ごろ アクセス：競輪場前駅から徒歩で8分ほど（旧馬場家住宅・Kobo Brew Pubまで） #岩瀬浜 #沙石 #kobobrewpub #旧馬場家住宅 #富山旅行 #富山観光 #富山市 #北陸旅行 #北陸観光 #toyama_next #とやま観光ナビ #富山の本気 #国内旅行好き #国内旅行好きと繋がりたい #港町 #北前船 #古民家リノベーション #桝田酒造店 #満寿泉 #kobobrewery #建築好き #建築巡り #名建築 #建築デザイン #古民家バー #日本酒バー #日本酒立ち飲みバー #富山バー #ひとり旅 #旅のある暮らし