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【吉野③(水分神社と詞藻の系譜)】(奈良県吉野町 旧国名:大和)

<史実と幻想が混淆した“歌枕”の代表格 その水脈は多くの詩歌に息づいています> 日本の文学史上における“吉野”の存在を考える場合、同地の歴史上に最も名高い南北朝時代から遡り、平安時代まで視線を戻す必要があります。古来、吉野は役小角(えんのおづの 7世紀頃)によって開かれた金峯山寺(きんぷせんじ)を中心に、修験道の信仰拠点として繁栄しましたが、役小角は金峯山寺の本尊である“蔵王権現”を感得した際、その姿をヤマザクラの木に刻みました。この縁起から、吉野とヤマザクラは“歌枕”的結節を成し、やがて多くの文学作品を生む素地と気分を生み出します。 吉野における文学性を語る際に欠かせないのが西行(さいぎょう 1118〜1190)です。西行は俗名を佐藤義清(のりきよ)と言い、宮中の警護を担う“北面の武士”でしたが、23歳の時に卒然と出家に至りました。その動機については今日なお明らかでなく、武士の業への絶望とも、恋に破れた末の失意とも伝わります。間もなく笈を背に漂泊の旅に出た西行は、吉野金峯山を登りつめた先に小さな庵を結び、3年にわたる時日を過ごしました。西行はこの庵居の様を とくとくと 落つる岩間の 苔清水 汲みほすまでも なき住居かな と詠みました。また、桜をこよなく愛した西行は、役小角に由来する“吉野=ヤマザクラ”の結節を意識してか桜にまつわる歌も多く残し、今日にも継承される、吉野の“桜の名所”というイメージの醸成に影響しました。 西行が吉野を去り、源平の争乱が打ち続いた後、吉野には新たな文学の系譜が紡がれます。その主役となったのが源義経(1159〜1189)です。義経は、平家を壇ノ浦に滅ぼす大功をたてながら兄頼朝と懸隔を生じ、兄から追われる身となりました。1185年冬、畿内から脱出すべく、義経主従は金峯山寺やその僧坊吉水院などの宗教勢力を頼って吉野に入りましたが、間もなく同所に危険が迫ると深雪の山越えを図ります。ところが、吉野から熊野へ抜ける大峯(おおみね)の山道は古来女人禁制と定められていたため、義経はやむなく愛妾の静御前(しずかこぜん 生没年不詳)へ山中に今生の別れを告げました。やがて静御前は頼朝の手勢に捕われ、鎌倉へ送還された後に、仇である頼朝夫婦を前にして 吉野山 峰の白雪 踏み分けて 入りにし人の 跡ぞ恋しき と義経への慕情を歌い上げたことは有名。その悲恋と気高い精神は、彼らの人気を高めた物語が流行するとともに、吉野とりわけその冬景に清冽な燐光を添えたのです。 時代は下り“南朝”の盛衰に伴う多くの人生が明滅すると、吉野の文学的風土はいっそう豊穣なものとなります。とりわけ現代の観光地としての位置に通じるのが、1594年の“吉野の花見”。豊臣秀吉(1537〜1598)が文武百官およそ5千人を率いて催したこの盛事は、全山を挙げての祈祷(雨が止まねば寺社を焼き討ちにすると秀吉は脅したという)、趣向を凝らした諸大名の仮装大会など、数々の逸話を生み出したほか、竹林院群芳園(ぐんぽうえん 写真8~10枚目 吉野の花見に際して細川幽斎が整備したという)などの旧跡を今日に伝えています。 他に、一連の系譜を体感するのに最適なのが吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ 写真1〜7枚目)。西行が庵を結んだ上千本に近く、豊臣秀吉の子秀頼(1593 〜1615)の命で再建した社殿が建ちます。その名に示される通り、山嶺の水源として古くから尊崇された神社で、“みくまり”と“みこもり”の類似から子宝の神としても有名。実際に結縁した例も多く、江戸時代の国学者本居宣長(もとおり のりなが 1730〜1801 伊勢国松阪の医師だったが、国学に傾倒して『古事記』を著し大きな影響力を持った)の父もその一人。宣長は水分神社への祈願によって授かった子と聞かされていたようで、その縁起から吉野を旅行し、当地の魅力を『菅笠日記』(1772)に記して世に広めました。このように、自然、信仰、歴史、政事、恋愛とさまざまな要素が輝きを放ちながら混淆した吉野の風土と文化は、日本における“歌枕”の典型と見ることができ、宣長の提唱した“もののあはれ”の心性にも深く通じる魅力を保っています。 ひとり旅おすすめ度:★★★★(人はいるけど少なめ。静かに観光できる!) 探訪日:10月第1週土曜日8時ごろ アクセス:近鉄吉野駅から徒歩で35分ほど(如意輪寺) #吉野 #吉野水分神社 #西行庵 #吉野山 #奈良 #奈良県 #奈良旅行 #奈良観光 #わたしは奈良派 #うましうるわし奈良 #いまふたたびの奈良へ #奈良好き #吉野町 #国内旅行好き #寺社仏閣 #寺社仏閣巡り #神社巡り #神社好き #水分神社 #竹林院群芳園 #日本庭園 #世界遺産 #西行 #源義経 #静御前 #豊臣秀吉 #本居宣長 #歴史好き #ひとり旅 #旅のある暮らし
投稿:2024年1月9日
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